惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
11:さっさと帰って欲しい(ルーカスside)
――――エリーゼは昔からロマンス小説に出てくる様な王子様が好きだと言っていた。
 だからエリーゼを皇子でもあるジルと会わせたくは無かった・・・。
 どうか彼女があの男に惹かれる事が無いように・・・。
 彼女の傍を離れる時、ただそれだけを願っていた。



「やっと来たか!!こんな硬い椅子で何時間も待たせやがって!!」

 俺が部屋へ入るなり、異常な程汗をかいた中年の男が顔を怒りで歪ませながら怒鳴り散らかしてきた。
 いつもなら俺のご機嫌取りをするように、ヘラヘラと薄っぺらい笑みを浮かべて話しかけてくるやつが、今日はそんな余裕など無いようだ。

 逆によく何時間も待ったものだな・・・。
 この部屋は俺が早く帰って欲しいと思う相手と話をする時のための部屋だ。
 椅子もわざと座り心地が悪いものを置いている。
 こんな部屋に案内されればさっさとかえってくれると思ったんだが・・・相変わらずこの男は時間を無駄にするのが得意なようだ。

「私は特に話すことなどないので・・・。それより、客を待たせているので手短に要件をお願いします」

 俺の言葉に公爵は更に怒りを滲ませ、充血して真っ赤になった目が見開かれた。

「何を言うか!!私が何時間待ったと思ってるんだ!?後から来た奴なんか、いくらでも待たせておけばいいだろうが!!」

 奴だと・・・?
 誰に向けて言ってるんだ・・・?
 本当に・・・親子揃って身の程知らずが・・・。
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