愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜



「お、お馬鹿! なんでシャツ一枚で帰ってくるの! なんでコート脱いでるの?!」
「ん? えーと、話すと長くなる」
「え、なんで?」
「この前からこのアパートの近くに親とはぐれた子猫がいて、今日雪だし寒いから心配して見に行ってたんだ。道の端で丸まってたから、コートに包んでどうするか考えてたら、近くの魚屋さんも心配して見にきてくれてて、飼ってくれることになった」
「へぇ……私の知らないところでそんなことがあったのね」
「嬉しくてさ。猫引き渡した後、寒さなんて忘れてコート着ずに帰ってきちゃった」
「……今だんだん寒くなってきたんでしょう」
「うん。寒くて死んじゃいそう」



 シャツ一枚で帰ってきたのにそんな理由があろうとは。怒るに怒れないじゃないか。


 私はユキにブランケットを被せ、コタツに入れる。
 温かいココアを入れて差し出すと、嬉しそうにユキは微笑んだ。



「ユキって、服が少ないわよね。コートももう一枚くらい欲しいし、室内でもいつもシャツだからセーターとか欲しくない?明日あたり買いに行く?」
「えーー……あぁ、確かに」



 ユキは口に手を当て、何かを考えるとパッと顔を上げる。


< 112 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop