愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜



「多分、会えないよ」
「……え」
「会いたくないから、この時間なんだ。この時間なら顔を合わせなくて済む」
「ちょっと待って、でも一言くらい」
「春香についてきてもらうのも、一人だとどうしても色々考えてしまうから」



 顔を上げたユキの目に、銀色の前髪が一筋かかっている。口角はいつもの様に上がっているのに、笑っていない。


 寂しさを、押し殺す様な……。
 思わず息を呑んだ私を見てユキは目を見開き、ぐっと口角を持ち上げた。



「なーんてね」
「……え」
「ただ、一人だとめんどくさくなっちゃうからついてきてもらってるだけだよ。今日だって親は仕事だからいない」
「そうなの?」
「うん。だから春香が挨拶するのはまた違う機会だね」



 パッと繋いでいた手を離し、先に歩き出すユキの背中を見つめる。
 さっきの言葉が冗談に思えなかった。私の考えすぎなのかしら……。


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