消えた未来
第十一話
 自分でも恥ずかしくなるくらい息巻いていたのに、なにも思い浮かばないまま、一週間が過ぎた。

 日に日に、久我君から期待はずれというような空気が流れているように感じて、私は少しだけ焦り始めていた。

 でも、思いつかないのは仕方のないことだと思う。

 冷静に考えてみたら、私、異性と遊んだことがない。

 同性でも中学生のころの話だ。

 高校生がどんなことをして遊んでいるのかなんて、知らなかった。

 でも、さすがにそろそろなにか提案しないといけないと思い、私が考えたのは、お菓子作りをすることだった。

 久我君は喫茶店のお手伝いをしているし、最近興味が湧いてきていたから、ちょうどいいと思った。

 そして、やっといい報告ができると思ったその日の朝、久我君は教室にいなかった。

 始業のベルが鳴っても来なくて、遅刻するなんて珍しいと思っていたら、加野先生が言った。

「今日のお休みは、久我さんだけです」

 久我君の病気を知っているから、それを聞いてから悪いことしか考えられなかった。

 さっきまでの楽しい気分が、嘘のようだ。

 とりあえず久我君の様子が知りたくて、保健室に行こうと思ったけど、私は高瀬先生によく思われていないってわかっているから、行くことに抵抗があった。
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