消えた未来
 そんな反応をされると思っていなくて、目を疑った。

 その表情に、私が悪いことをしてしまったような気になってしまう。

「あの、ごめんなさい……」

 だから、よくわかっていないまま、そう言った。

 久我君は鼻で笑う。

「なんで謝ってんの? むしろ、俺のほうが謝るべきだと思うんだけど」

 私は首を横に振る。

 久我君は悪くない。

 私が勝手に相談して、答えを求めて、それが期待するようなものじゃなかったから、八つ当たりをした。

 どう考えても、私が悪い。

「そんな申し訳なさそうな顔しないで。俺がいじめたって思われるから。特にあの人」

 久我君が視線を動かしたから、その先を見る。

 私たちを睨みつける星那がいる。

 どう反応しようかと思っていたら、久我君が立ち上がった。

 どんな理由でどこに行っているのか教えてくれないけど、久我君は一時間目が始まる前に、必ず教室を出ていく。

 もう、そんな時間になったみたいだ。

「久我君、話を聞いてくれて、ありがとう」

 せめてお礼は言っておきたくて、慌てて言う。

 久我君は穏やかに微笑んで、教室を出ていった。

 その久我君を、怒りの雰囲気を纏った星那が追いかける。

「……え?」
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