消えた未来
 そして、久我君がいなくなってもお姉ちゃんはなにか言いたそうに私を見てきた。

 どうせさっきの続きで、反応しないほうが賢いとわかっていたけど、無視もできなさそうだった。

「……なに?」
「彼は真央の好きな人?」

 予想通りに面倒な言葉で、思わずため息が出てしまう。

 男女の仲は恋愛関係しかないとでも思っているのだろうか。

「違うよ」

 そのせいもあって、声が冷たくなってしまった。

 だけど、お姉ちゃんはまだにやにやしている。

「本当になにも思ってないの?」

 どうしてここまで恋愛に結び付けたいのだろう。

 ここまでしつこいと、面倒を通り越して嫌になる。

「……尊敬はしてるよ。こうやってお母さんたちと向き合おうと思ったのも、久我君がきっかけだし」

 少しでも本音を伝えて、この話題を終わらせてしまいたかった。

 でもお姉ちゃんの顔を見る限り、まだやめてくれなさそうだ。

「本当に好きじゃないの?」
「本当に、そういうのじゃないの」

 なにより、久我君と恋愛関係になるところが想像できない。

 そして私の態度がつまらなかったのだろう。

 お姉ちゃんはようやく、その話題に対しての興味をなくした。

 ケーキが運ばれてきたから、やめたのかもしれないけど。
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