酔いしれる情緒


________________________________




夕食を食べ終え、使った食器も洗って、

今日の家事は終わりを迎えた。



まだ寝るまで時間はあるし、
部屋で本でも読もうかと考えた。



リビングにはもう春の姿はないからと電気を消す。





………ほら、今まで通りじゃないか。


これで春は癒されたの?





電気が消えて暗くなったリビングを背にし、
部屋へと向かう。



そして自分の部屋のドアノブに手をかけた……時、





「ダメだよ、凛。」


「っ! ビックリした……」





ドアノブにある手に春が手を添えてきた。



真後ろに感じる春の気配。

その影のせいで視界が自然と暗くなる。




……いつの間に。

てかどこにいたんだ今まで。







「……なに?」





振り向けずにその状態のまま春に問いかけた。





「今日はずっとそばにいてくれるんだよね」

「そう、だけど」

「じゃあそっちじゃないでしょ?」

「…………は?」





どういうことだ?





「あっ、ちょっ…」





私の手を取ってクルリと方向転換。




向かう先は春の部屋。



え、まさか。






「寝る時も?」

「もちろん」





振り向いた彼はニコニコと笑みを浮かべてる。




< 126 / 325 >

この作品をシェア

pagetop