酔いしれる情緒
「…………あのさ、」
遠回しに、とかじゃなくて
単刀直入に聞こう。
そう思って隣にいる彼に話を始めようとした。
……が。
「っ、……なんで、今?」
触れるだけの軽いキス。
ちょっと待ってと言えばいいものを、彼は行動で話を始めようとした私を止めたのだ。
目の前には端正な顔立ちの春がいる。
私の顔を覗き込むようにして見る春の瞳。
吸い込まれてしまいそうになるほど
綺麗な瞳とのにらめっこは、苦手だ。
「その話ってさ、どういう系?」
「どういう系って…」
耐えきれず、フイッと視線を逸らす。
そうジーっと見ないでほしい。
しかも至近距離で。
いっそのことサングラス付けてくれないかな。
真っ黒で、その瞳を隠せるくらいの色のやつを。
見つめる先は、部屋のドア。
無意識にもここから逃げ出したいと思っているのかも。
いや、ここからというか、その目から。
「凛」
意識は再び目の前の彼へと戻された。
そこには真っ直ぐな視線を私に向ける春。
その瞳に捕らえられると、毒でも飲んでしまったかのように身体が痺れては鼓動が速まっていく。