酔いしれる情緒



「………勝手に決めつけないでください。



無駄かどうかは自分自身が決めること。

他人のあなたが決めることじゃない。」





後悔はした。


なんで一緒に住むことを決めちゃったんだろうって。





だけど、





「確かに彼は強引に話を進めてきました。

家政婦をして欲しい、そう言ってきましたよ。


……けど、その事に承諾したのは紛れもなく
" 私が "したことです。


やりたくないなら断ればいい。
けど拒否をしなかったのも私なんです。


私が無駄じゃないと思っているから、
今も春のそばにいる。そういうことなんです」





春のいないこの数日間は

なんだかとても殺風景で静かで

色のない日々だった。



前まではそんな生活が当たり前で、

平凡な生活であってもそれはそれで良い人生だと思ってた。




けど、春に出会ってから

今まで無色だった毎日が

色鮮やかに染まっていった。





「強引だし自己中だし、私の意見なんて聞いてくれやしないし、私がうんって頷くまで執拗いし。

そんな自己中野郎とは関わらないのが最適なことくらい分かってます。



……けど、なんででしょうね」





理由なんて、分かりきっているくせに。







「─────彼の手は振り払えないんです」







今までに経験したことのない、

感じたことのない感覚。



心がその一点に支配される気持ちも


胸の奥で温かいものがじんわりと広がっていく感覚も


寂しいと思ってしまう感情も。






今までの人生で経験したことのないそれらを



春が私に教えてくれた。





ムカつくほど綺麗な顔立ち

柔らかい髪の毛、色素の薄い目、

まつ毛がムダに長いこと

声も、表情も、強引なところも。



私と違って素直に気持ちを伝えてくれるところも。



言い出せばそれ以外にも沢山あるのだから、
考えても伝えたとしてもきりがない。





ただ一つ言えることは



振り払えない理由は全てそこにあって、



私は彼のその全てが愛おしくて。








「好きなんです、春のことが」









もう二度と、心の奥深くになんてしまえない想いを抱えているということだ。

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