酔いしれる情緒
口から漏れる言葉の数々は
橋本さんに反抗するものばかり。
正直言って怒鳴られるの怖い、が。
言わないと気が済まないのが私であって、
怒鳴られるのが怖いとかそんなこと
今はもうどうでもよかった。
「私は私の意思でここに来た。私自身が選んだ道。それをあなたは無駄だと言う。
決めたことを否定されるのって
どれだけ腹ただしいことかご存知ですか?」
相手が社長だろうと関係ない。口出しするなら私だって言いたいことは言わせてもらう。
相手に話す余裕すらも与えないまま言葉を繋ぎ、そうであっても冷静に口を動かした。
けど……さすがに少し喉が乾いた。
橋本さんは何度か言葉を発していたけれど、完全に無視して喋り続けたからやけに喉が乾いてる。
もう目の前の豪華な食事に手を出す気はないけれど、飲み物ぐらいはいいだろうと思って、ずっと太腿の上に置いてあった手を動かし、透明なそれを飲んだ。
その時も橋本さんは「あっ」と何かを言いたげだったが、私は言葉を待たずにグビっと飲み干す。
ここに来た時は湯気がたつほどだったそれは、あれから数分、いや、1時間は経っているため既にぬるくなっていた。
けどまあ、今の私にはこれがちょうどいい。
カッとなっていた頭がそのぬるくなった飲み物のおかげで少しばかり冷静さを取り戻した気がする。
「えっと……大丈夫、ですか?」
…が。なんでこの人は、また私の頭を再熱させるような言い方をするのか。
まるで我儘ばかりを言う子供を うんうん と聞き流す大人のような振る舞い。
ほんと───────腹立たしい。
「アイツを野放しになんてするから……こんな事になってるんだって、分かってますか?」
身体中がカッと熱くなっていく感じ。
ヒートアップしているせいか、頭もなんだかクラクラする。
「私達の関係を望んでいないんでしょう?
────だったら、
私達が出会わないように春の行動ぐらいその目で監視しときなさいよ…!」
視界がボヤけているのはなぜだろう。
泣きそうになっているから、か?
いや、違う。そんな感情は一切ない。
「アイツが、どれだけ、狂っているか…」
潤む瞳。なぜこうなったのか、その経緯も分からないまま話を続ける私。
「……春が、どれだけ、私を───」
その瞳から何かが零れ落ちそうになった─────時。
そばの襖が音を立てて開いた。
「橋本さーん。話ってなに?」
聞き慣れた声で
「俺早く帰りたいんだけ……ど、」
この緊迫した空気感に怯えることも無く、
不服そうな表情を浮かべて
中に足を踏み入れたこの人は
「えっ。凛…?」
なんでここにいるんだと言わんばかりに、消えてなくなってしまいそうな声で私の名前を呼んだ。
なんでここにいるんだ、なんて。
こっちのセリフだ、バカ。