大人になる方法
2人と出会ってから2ヶ月が経ち6月になった。


梅雨がやって来ると
凛の前髪は常にうねるようになった。

だけど、膝上丈のスカートから覗かせる
長い脚は本当に綺麗だ。

私とは違って、純粋で素直。

憎めない可愛らしい子。

真っ白で甘味の強いマシュマロみたい。


しっかり者のニイナは、いつも凛と私に
世話を焼いている。

ショートカットがよく似合うボーイッシュな子。

凛がマシュマロなら
ニイナは淡い色に染められた飴。

その飴を噛むと、何かが溢れ出て来るような。

何かを秘めたように見える。


私の中には間違いなくトラウマがある。


だけど、なんとなくわかる。

たったの2ヶ月だけど
記憶の中に残る偽物と2人は全く違うって。

大切にしよう。

2人のこと、そして自分のことも。

もう2度と失いたくない。




「あれ、心?」

「本当だ、心じゃん」




後ろから、聞き覚えのある大嫌いな声がする。


一瞬にして、激しい動悸と共に
数年前のいくつかの記憶が脳裏に浮かんだ。


近づく人影に、わたしは振り向いた。


そして笑った。

笑いたくもないのに、笑った。


「久しぶりだね。ななみ、のの。」


気づけば、私は仮面を被りその声を発した。
< 10 / 16 >

この作品をシェア

pagetop