request








「その撫でる癖どうにかならないの…」


「撫でやすい位置にあるのが悪い」





そうして再度また撫でられる。



今度はさっきと違って、軽く、優しく。





「ああ、そうだ」





何かを思い出したらしい彼は


ポケットから何かを取り出すと






「これ、ハルトがお前にって」


「えっ、ハルトくんが?」





私の手のひらに、1つのキャンディが。






「あの日、キャンディをくれたお礼だってさ」


「(そういえば……)」






泣いていたハルトくんをなだめようとして、キャンディあげたっけ。






「いいのに……」





覚えててくれたことが、嬉しいや。






「いらねーなら、俺が貰うけど?」


「あげません!!」





すぐさまポケットへとしまった。



甘い物ならなんでもかんでも好きなんだから…





「………明日、ちゃんと甘い物あげるから…さ。それまで我慢していてよ」


「明日?」


「蒼空さんの1番好きなイベントでしょっ」


「ああ、バレンタインね」


「(それで分かるんかい)」





明日は、バレンタインデー。



未だに何を作るか決めていないものの


喜んでくれる自信はあるんだ。



甘い物ならなんでも好きだしね。





「ファミリーパック、楽しみにしてる」





なんて。


私が去年蒼空さんにあげた物を思い出したみたいで、





「うっ…なんで覚えてるの……」


「俺の好きなお菓子だったからな」





そう言って、ふっと鼻で笑う。





「今年もファミリーパック楽しみにしとこーっと」


「今年はさすがに違うし!!!」





今年は…蒼空さんに好意があるんだから。





「ん。楽しみにしてる」





そんな私の返答に、優しく微笑む蒼空さん。




だから蒼空さんの笑みに弱いんだって…


ただ微笑んでくれただけなのに、胸がキュンと音が鳴る。




くそう、カッコいいな…

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