すずの短文集
僕に落ちる雨音
 僕は『テッシー』です。
 僕は人間ではなくて、お散歩中だった犬さんによると『小さな水竜』なのだそうです。

 かんとー、という場所の沼に住んでいます。

 今年も雨が毎日のように降る季節になりました。

 雨が降るとたくさんの人間さんが、色とりどりの“大きな逆さのお花”のようなものを持って沼のそばを歩きます。


 雨がパラパラ降る時。
 こちらの透明なお花に落ちる音は、
パタパタパタ…

 あちらの黒いお花に落ちる音は、
ポタポタポタ…

 雨がたくさん降る時。
 こちらの赤いお花に落ちる音は、
バラバラバラ…

 じゃあ、僕に当たる雨の音はどんな音だろう?


 ある雨の日、僕はこっそり沼の水から頭を出して、耳を澄ませてみました。

 すると、

ピシャピシャピシャピシャ…

 あれあれ?
 何で僕に当たる雨はこんな音なのかな?

 その時、

『ずぶ濡れのテッシーくん、当たる雨の音はピシャピシャ〜♪』

 雨から逃げていく一羽の鳥さんが、そう歌いました。

 そっかあ、僕の頭はさっき沼から出たばかりでビショビショに濡れているから、こんな音がするんだね。

 僕はこんな雨の音が好き!
 もっともっと、色々な雨の音が聞きたいな!
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