すずの短文集
僕の立つ地の裏側に
地面に大きな穴があった。

僕一人が入れるくらいの大きさ。
深さはどれくらいだろう?大きい人が入っちゃうくらいかもしれない。

気になったからのぞいてみたら、ずっと奥はなぜか明るくて、そのうえ誰かが見えた。

「え……」

僕は二度見した。

地面に穴があったって、普通は下にあるのは土か石か岩。地面の下に人がいるわけがない。でも、確かに見えた。
僕の立っている地面の裏側に、逆さになって立っているらしい。

「…だれかいるの…!??」

僕は、誰かが見えていた穴の奥に向かって声を掛けた。

(だれもいるわけないか…。)

誰も見えなくなった穴の奥を、もう一度見てそう思ったその時、

「あ…!」

誰かが、僕ののぞいてる穴の中の、裏側の方に来た。
そして穴を見つめ、奥にいる僕に気づいた。

小さな男の子だ。
僕を見て笑った。

「…君、言葉はわかる…!?」

そっちに向かって叫んでみる。

でもその子は手を振るだけ。

(何者だろう?人間じゃないよね…。じゃあぼくの言葉は分かんないかな…)

その子はそのままどこかに行ってしまった。
そして、僕は見てしまった。

穴の奥の裏側に、太陽の代わりに辺りを照らす、真っ赤なドロドロとした、空に浮かぶものを。

「…!!」

穴の奥から熱さまで伝わってくる。

マグマだ……

僕は走って逃げた。
あの赤いドロドロとしたものが、こっちの世界を襲ってくるような気がしたから。


気付けば穴は消えていた。
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