想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
その時、病室の扉がノックされた。

「はい」
宏貴が離れようとしても、恵理が手を握って離れない。
「すみません、入っていただいて大丈夫です。」
宏貴の言葉に遠慮がちに病室の扉が開いた。

恵理はすぐに顔を宏貴の背中にうずめて隠れてしまう。

「すみません、こんな状態で。電話でご挨拶させていただきました、一橋宏貴と申します。」
「・・・」
宏貴が立ち上がろうとしても、恵理が強く宏貴の背中にしがみついていて立ち上がれない。

「遅くなりすみません。恵理の父の美園高志と申します。」
低く貫禄のある声に、恵理の体がピクリと反応する。

でも宏貴の背中から離れることができないのは、過去の記憶が一気に蘇るからだった。
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