海とメロンパンと恋
西の街へ



桐悟さんが帰った夜


新しい携帯電話にお兄ちゃんから着信があった


(ごめん)

「・・・私も、ごめんね」

久しぶりの兄妹の話を
両親は近くで聞いていてくれて

お盆の帰省で再会することを約束した




・・・




「こんばんは」


一日の終わりに桐悟さんへ電話をかける


(胡桃)


鼓膜を震わせる低音は
いつだって私の胸をドキドキさせる

「今日、お兄ちゃんと仲直りできてね
お盆には四国に帰省するって聞いたの」

(そうか)

「お兄ちゃんが『俺より先に胡桃に会うとか許せねぇ』って拗ねてた」

(それは嬉しいな)

「フフ」

(今日な、陽治が鯛を料理したんだが
途中で失敗したってカレーに変更になった)

「・・・え、そんな」

穂高の冷蔵庫に入っていた鯛を思いだして
勿体なさに眉が下がった

(胡桃に作って欲しいな)

こんな時は桐悟さんの声が甘くなるから厄介
だって、もう、今直ぐに飛んで行きたくなる


「お盆明けになるけど・・・」

(来るのか?)

「女人禁制でもOKが貰えるなら」

(そんなの構わねぇ)

「じゃあ、私も楽しみにしてる」

(あぁ。奴らには内緒にしておく)


先の約束が出来る楽しさに浮かれていた私は


西の街でアレコレ面倒事に巻き込まれるなんて


知る由もない






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