海とメロンパンと恋



「チッ」


「酷い歓迎だな」


「歓迎してねぇ」


「フッ」


強がって笑って見せたところで
連んでいた柚真にはお見通しで


「弱ってんじゃねぇか、クッ」


笑われる始末


「胡桃と連絡がつかねぇ」


「大丈夫、元気だ」


「柚真の口から聞きたくねぇ」


「そんなこと言ってっと
何にも教えねぇぞ?」


「・・・いや、それは、困る」


「で?怒らせたのか?でかしたぞ」


「怒らせてなんかないっ」


「ふーん」


「弁慶の名前を聞いた途端に慌て出して」


「へぇ」


「そのまま電話を切ってから電源が落ちてる」


「そういうことか」


「どういうことだ?」


「牛若丸と弁慶が兄弟なんて言ってないからな
胡桃なりに名前から繋がりを知ったんだろ
それに・・・名乗ったのか?」


「初めて電話した日に」


「胡桃は割とその場は聞き流しておいて
後から考え直すことがよくある
だとしたら・・・穂高と組の名前が繋がって
お前が組長だと気付いた、とかかな」


「・・・そういえば「頭さん」って
呼ばれた」


「それだな、頭ってことと穂高が繋がって
そんな奴と自分が繋がってて良いのか悩んでるってとこだろう」


「・・・参った」


「俺にお願いしても無理だぞ?
お前との縁なんて繋がらない方が良いと思ってるからな」


「・・・チッ」


「でも、まぁ、ひとつだけ教えてやる」


「・・・あぁ」


「胡桃は明日迎えに行く」


「本当か」


「また俺とイチャイチャ暮らす」


「チッ」


「牛若丸の散歩には行かせる」


「・・・礼を言う」


「お前のためじゃねーよ
牛若丸と胡桃の健康のためだ」


「・・・チッ」


「女如きに一生懸命になってるお前も
なかなか見てて面白い」


「・・・女如きじゃねぇ
胡桃だから、だ」


「フッ、そうかよ」


反対しながらも俺の気持ちを汲んでくれる器のデカイ柚真


「俺、やっぱお前好きだわ」


「気持ち悪りぃ」


「「ハハハ」」


結局最後は連んでいた頃のように
笑ってしまう


何年経っても変わらない関係に
ホッとしたところで


「時間です」


蒼佑から声がかかった




side out



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