海とメロンパンと恋



「さぁ、行こう」


そう言って繋いだ手を引いた桐悟さんに連れてられて

入口を入ると洋食屋さんだった


カントリー調で揃えられたインテリアは
赤のギンガムチェックがよく似合う


「可愛い」


桐悟さんからは想像もつかないお店に顔を見上げると


「似合わないか?」


頭の中を読んだみたいに
少し照れた桐悟さんが見えた


「・・・少し」


フフと笑ったところで
厨房から男の人が出てきた


「いらっしゃ、え、えっ、え?」


桐悟さんを見るなり鳩豆顔で焦り始めた


「落ち着け、成瀬」


「これが落ち着いていられるかって」


白いコックコートを着た成瀬さんは
桐悟さんと大石さんの大学の同級生で


なんと!お兄ちゃんとも友達だという


「柚真の妹がこんなに可愛いとか
俺、知ってたら行ってるし」


・・・行ってる?


「てか、その妹と手を繋いでる桐悟とか
もう地球の滅亡しか考えらんねぇ」


・・・成瀬さんは表現が極端だ


「そのへんで良いか?
腹は減ってるし、胡桃が驚いてる」


「あ、ごめんね、胡桃ちゃん
今日は貸切だから、ゆっくりして行ってね」


適当に座ってと厨房へ戻って行ったから


「胡桃、こっちだ」


桐悟さんと窓際の半個室へと移動した


「なんでも美味いとは思うが
好きなのを頼むと良い」


先に選ばせてくれるようで
メニューを渡された


「はい」


メニューも赤のギンガムチェック仕様で
可愛らしい字のコメントがついた写真付き


どれも気になるけれど
折角の外食は普段作らないものを頼みたい


だから・・・考えるまでもなく


「ビーフシチューをお願いします」


メニューを桐悟さんに返した









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