パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 来月、実質的な卒業試験にあたるディプロム認定試験がある。
 最初の飛び級が功を奏して、これに無事合格すれば、最短の1年で学校を卒業できることに。

 試験内容はオリジナル香水の作成。
 香調だけはフローラル系と指定されているけれど、あとはまったくの自由。

「試作を持って帰ってるから、あとで嗅いでみてくれる? アドバイスが欲しい」
「ああ」

 作りたい香水のイメージはすぐ固まった。
 香調は〝フローラル・ジャポネスク〟。
 わたしの造語だ。
 メインノートは「芍薬(ピオニー)」。

 芍薬(しゃくやく)は毎年6月ごろ、祖母の家の庭で咲き誇っていた、わたしの一番好きな花。
 大きな薄桃色の花と、甘く爽やかな香りは今でもしっかり記憶に残っている。
 
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