初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

元カノの写真は過去に一度目にしたけれど、自分と似ているとは少しも思わなかった。でも、美琴さんと付き合いが長い麻里江さんがそう言うのなら、似ている部分があるのだろう。

「そういえば去年のゴールデンウィークに、あのふたり再会したらしいわよ。直斗から会いたいって連絡があったって、ウィーンに住んでいる美琴から聞いたわ。もしかしたら今頃、あなたに内緒で美琴とまた会っているかもね」

麻里江さんの話を聞き、ウィーンからひと足先に日本に帰る私を見送ってくれた彼と交わした会話を思い出す。

空港で『直君は帰国まで、どう過ごすの?』と尋ねた私に、彼は『この後、知り合いと会う約束をしている』と、たしかに言った。

去年のゴールデンウィークに彼がウィーンに行ったのは、元カノの美琴さんを訪ねるのが本来の目的だったのかもしれない。

そう思うと、不安で胸が押しつぶされそうになった。けれど、美琴さんと会ったのが事実だとしても、私たちが付き合う前の出来事について彼を責めるのは間違っている。

過去がどうであれ、彼は私を選んでくれた。今は離れ離れでも、私は夫である彼を信じている。
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