初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
じゃあ、心に燻るこの感情はいったいなに?
考えを巡らせていると、ウィーン空港駅に着いた。
私のキャリーケースを軽々と持つ彼の後をついて行き、搭乗手続きを済ませる。
これで本当にお別れだと思うと、どうしようもなく寂しい。
やっぱり、さっき自覚した感情は嫉妬なのかもしれない。
改めて自分の思いと向き合っていると、彼がジャケットの内ポケットから小さな箱を取り出した。
「受け取ってくれ」
「えっ?」
彼の手のひらにすっぽりと収まっている箱のロゴは、昨日立ち寄ったクリスタルジュエリーショップの物だ。
「小夜子ちゃんに似合うと思って買った」
説明を聞いた瞬間、ショップでショーケースを覗き込んでいた彼の姿が頭に浮かぶ。
あれは、私へのプレゼントを選んでいたんだ。
思いもよらない事実を知り、ラッピングされた箱を受け取る手が感動で震えた。
「ありがとう。開けてもいい?」
「ああ」
緊張しながらリボンを解き、蓋を開ける。
「すごく素敵……」
箱の中に入っていたブルーのクリスタルが散りばめられたバレッタを見て、感嘆のため息をついた。
「気に入ってくれたか?」
「もちろん!」
選んでくれたプレゼントを身に着けた姿を見てもらいたくて、下ろしたままの髪を束ねてバレッタで留める。
気恥ずかしい思いを抱えて彼の顔を見上げると、耳を疑う言葉が聞こえた。