初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

じゃあ、心に燻るこの感情はいったいなに?

考えを巡らせていると、ウィーン空港駅に着いた。

私のキャリーケースを軽々と持つ彼の後をついて行き、搭乗手続きを済ませる。

これで本当にお別れだと思うと、どうしようもなく寂しい。

やっぱり、さっき自覚した感情は嫉妬なのかもしれない。

改めて自分の思いと向き合っていると、彼がジャケットの内ポケットから小さな箱を取り出した。

「受け取ってくれ」

「えっ?」

彼の手のひらにすっぽりと収まっている箱のロゴは、昨日立ち寄ったクリスタルジュエリーショップの物だ。

「小夜子ちゃんに似合うと思って買った」

説明を聞いた瞬間、ショップでショーケースを覗き込んでいた彼の姿が頭に浮かぶ。

あれは、私へのプレゼントを選んでいたんだ。

思いもよらない事実を知り、ラッピングされた箱を受け取る手が感動で震えた。

「ありがとう。開けてもいい?」

「ああ」

緊張しながらリボンを解き、蓋を開ける。

「すごく素敵……」

箱の中に入っていたブルーのクリスタルが散りばめられたバレッタを見て、感嘆のため息をついた。

「気に入ってくれたか?」

「もちろん!」

選んでくれたプレゼントを身に着けた姿を見てもらいたくて、下ろしたままの髪を束ねてバレッタで留める。

気恥ずかしい思いを抱えて彼の顔を見上げると、耳を疑う言葉が聞こえた。
< 44 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop