一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
キッチンに立って
じゃがいもを洗い始めたのだが
男の人に料理なんて作ったことないから
緊張してしまう。


しかも社長さんなんて
舌が肥えてるから口に合うかな...


でも肉じゃが大好物って言ってたし
余程失敗しない限り大丈夫だよね...

そう自分に言い聞かせるようにかよ子はジャガイモの皮を向き始めた。


かよ子がふいにソファーに腰を掛けている翼に目を向けると
翼はかよ子の料理を作っている様子をじっと眺めていた。

あまり、見られると作りにくいな。
私は緊張で手を滑らせて包丁で怪我をしないよう注意を払いながら、具材を切っていく。

「ねぇ。ひとつ聞いてもいいかな?
カヨ子さんはお付きあいしてる人いるの?」

すると、ふいに翼の口から突拍子もな質問が飛び出した。

「はい...?」


急に投げ掛けられた質問の意図がわからず、
かよ子は野菜を切る手を止めると
翼のほうを振り返った。


「いや、もしお付きあいされてる方がいるなら、いくらなんでも泊めてもらうのは申し訳ないかなと思いまして...」


ビックリした...なんだ、そういうことか...

かよ子はホッと胸を撫で下ろした。


「お付きあいされてる方はいるんですか?」


なかなか答えない私に
神崎さんは待ちきれないのか
もう一度問いかけてきた。


あれ?

神崎さんの表情は変わらずにこやかなのに
バックに黒いオーラを放ってるように見えるのは気のせいだろうか?


「あ...心配なさらなくても...
そのような方はいませんので...」

生まれてのこのかた... 

心の中で呟きながら、
ハハッと苦笑いする。

「そうですか!それなら良かった。
料理の邪魔をしてすみません。
どうぞ続きに取りかかってください!」



そう言ってニコニコと嬉しそうな神崎さんは先程までの黒いオーラは消えて、代わりにお花が飛んでいるように見える。

なんだか分からないけど
機嫌よさそうだしまあいいか。


私は「はい..」と返事をすると
上機嫌の神崎さんを横目に
再び料理に取りかかった...

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