一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
「お、お待たせしてすみません...
ご飯できました...」


テーブルに出来た料理を並べていく。

肉じゃがだけでは寂しいので他にも
つくしの佃煮や山菜の炊き込みご飯、
お味噌汁も作った。


「うわぁ、美味しそうだな」

社交辞令なのだろうけど、大袈裟に
ほめれると質素な夕食に逆に居たたまれなくなってしまう。

「す、すみません...
こんなものしか用意できなくて...」


つくしと山菜なんて家のまわりに
生えているものを摘んできただけだし...



「いつも外食ばかりだから
手料理なんて何年ぶりかだよ
嬉しいな...
早速頂いてもいいかな?」


「ど、どうぞ...」


「いただきます!」


神崎さんは両手を合わせると
嬉しそうに食べ始めた。



「こんな美味い手料理はじめてだよ」



「ほ、褒めすぎです...」


神崎さんの言葉に再び顔が熱くなる。


社長さんだけあって
ほんとにお世辞がうまいな..

でも、お世辞だとしても嬉しい..

美味しそうにご飯を頬張る神崎さんを見てるとなんだか嬉しくなってくる。
そして、先程まで固くなっていた私の顔は
自然とほころんでいた。



ポロッ


すると、神崎さんが箸で掴んでいたじゃが芋が、ポロッとテーブルの上に落ちたのだ。

「あっ!すみません!
かよこさんが初めて笑ってくれたんで
少し動揺してしまいました」

神崎さんは顔を赤くしながら慌てて
落としたジャガイモを箸で摘まんでお皿に戻す。


「い、いえ、こちらこそすみません!
神崎さんが...
あまりに美味しそうに食べてくれるので
つい嬉しくなってしまって...」


「いや、カヨ子さんが
はじめて笑顔を見せてくれて
僕も嬉しいです」

わたしが愛想がないから気を遣わせているのだろう...

「か、神崎さんは...
お優しいですよね...」

「どうかな。
本性を見せたらカヨ子さんに
嫌われてしまいそうでこわいな...」

本性...?

私が首をかしげると
神崎さんはハハッと苦笑いした。



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