宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
ゆっくりと進行していく母の病気を見て、弟の歩は医学部を目指すと決めた。
「オレ、神経内科の専門医を目指すから。」
父の保険金があったので、歩は有名な東京の私立大学を目指すと言うのだ。
一花は、夢に向かって努力する弟を応援したが、
バレエを辞めた自分には何が出来るのかと悩み続けていた。
ある日、母が通う病院の近くに小さなバレエ教室がある事を知った。
そっと見学してみると楽しくて、久しぶりに気持ちが昂るのを感じた。
昔の様に踊れなくても小さい子にバレエの楽しさを教える事は出来る。
目標が出来たら勉強も頑張れた。
地元の大学に進学して幼児教育を専攻する事に決めたのだ。
何とか大学生になった一花は、
身体が強張る母を助けながら、伯父の家からJRで大学に通うハードな生活を送った。
辛い中でも、弟が大学に合格して東京へと旅立っていった時は嬉しく誇らしかった。
だが、じわじわと母の病気は進行していく。
母の実家にいつまでもお世話になるのは心苦しかった。
介護と、勉強と…。父が残してくれたお金も、歩の東京での学費に使いたい。
まだ学生では、生活設計もままならない。
『私が頑張らなくちゃ…。』