キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「そ、そうね。私、ひとりで部屋見つけるなんて自信ないし……」
「なにも兄弟で住む必要ないし、女性向けの一人部屋を探せばいいだろう? そんな変な部屋はないはずだ」
「え~、茉緒ひとりで住まわすのは心配だな~」
「わ、私も、ひとりは寂しいし、お兄ちゃんと一緒の方が心強いし~」
胡散臭そうに顔を歪める智成にお兄ちゃんと私は必至で言い訳をする。
都会で一人暮らしは実際不安だ。
お兄ちゃんを頼って上京したが、ここは背に腹は代えられない。
上目遣いでなんとか気を引く。
「智成~サン、も、いてくれると、お兄ちゃんがふたりいるみたいで心強さも二倍というか」
「大丈夫! こう見えて智成は優しいからな、路頭に迷う兄妹を見捨てることはしないさ」
「わ~イケメンな上に優しいなんてまるで神様みたい!」
調子に乗ってゴマを擂ってるとお兄ちゃんにこそこそと耳打ちされて私たちはふたりそろって神様を拝む。
「「お世話になります!智成大明神様!!」」
「いや、断る。今すぐ出てってくれ」
速攻で断られた!なんて冷たい!
でも、めげないお兄ちゃんはまたまた~と智成の隣に移動し肩に手を掛ける。
それを嫌そうに払いビールを飲む智成。
お兄ちゃんがこそこそと耳元で囁くとがっくりと項垂れた智成がガシガシと頭を掻きまわした。
「わーったよ! 住むとこ見つかるまでだからな!」
「喜べ茉緒! 今日から兄妹そろって智成んちに居候だ!」
「やった! ありがとうございま~す!」
喜ぶことじゃないとは思うけど、とりあえず住むとこ確保だ。
顔を上げた智成の髪は乱れ前髪の隙間からじろりと睨まれた。
怖っ!
でもそんな乱れた髪で色気が増した智成は麗しすぎでドキドキした。


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