キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「お前の嫁候補なのは確かだろ? この間配属された、ほら、有川千穂だったけか? 有川財閥のお嬢様。嫁候補筆頭だっていう噂だぞ」
ぐっと言葉に詰まる。
秘書課の女がみんな俺の嫁候補というのは言い過ぎだが、有川に関しては親が送り込んだ見合い相手なのは事実だった。
トラブルで陸翔がニューヨークに行く三日前のことだ、見合いを断り続ける俺に業を煮やしたのか強硬手段に出られ、まさか秘書課の俺直属の部下にされるとは思わなかった。
ただトラブルのおかげでそちらに構っている暇はなく、有川本人も特に見合いについて言ってくることはなかった。
「誰を送り込まれようと俺には関係ない。俺には茉緒だけだ」
「……おい、俺の前で惚気るなよ」
惚気たつもりはないんだが、嫌そうな顔して睨んでくる陸翔にふんと鼻を鳴らした。
「お前がそう思っても、茉緒も同じとは限らないぞ」
「なんだと?」
逆にふんと鼻を鳴らした陸翔は腕を組み俺を見遣る。
「考えてもみろ。茉緒はこっちに来たばかりで知り合いは俺意外智成しかいない状態だ。今はお前しか見えなくてもこっちで就職して知り合いが増え交流も盛んになったらいい男は智成だけではないと気づくはずだ」
「はあ?」
俺よりいい男なんてどこにいるんだよ、と、つい自惚れたことを考えていると陸翔に指摘された。
「智成だって久々の恋愛に舞い上がってるだけじゃないのか? ただ傍にいた茉緒に関心がいってるだけで離れて冷静になれば恋愛ではないと気付くだろ」

< 109 / 252 >

この作品をシェア

pagetop