キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
そして妹。
陸翔と声を揃えて『『お世話になります!智成大明神様!!』』と言われた時にはほんとは吹き出すところだった。
陸翔は妹を真面目で不器用なんて言っていたが、陸翔に負けず劣らずノリの良さにやはり似たもの兄妹だと苦笑いが零れる。
肩まであるゆるふわな癖毛のブラウンヘアと少したれ目の大きな瞳も陸翔に似ていた。
まあまあかわいい子だとは思うが、こいつも危機感が足りない。
マンションに着けば部屋をあちこち勝手に見回り「ほんとにジャグジー付きのお風呂だ!」とはしゃいでいたが、ここが男の家だとわかっているのか?
まったく警戒心のないこの妹にも呆れた。
しかし、俺は陸翔の友人ということで全面的に信用されてしまったらしい。
『よろしくお願いします! と・も・な・り・サン!』と無邪気に笑う妹に脱力してしまった。
なにかお願い事をしたいときにいきなりかしこまり、サン、だの、クンだの付けるところも兄妹ゆえか似ていたのには笑えてくる。
極めつけは薄いTシャツとショートパンツのパジャマ姿を晒しリビングに現れた妹と出くわしドキリとした。
「ま、茉緒っ、さすがになんか羽織れ。目のやり場に困る」
「なんで? お兄ちゃん見慣れてるじゃない」
さすがに陸翔も注意していたが首を傾げる始末。
あ、俺は陸翔のように兄貴認定されたんだな。
男が目の前にいるというのに全く意識してない妹に俺はなんとも言えない気持ちだ。
剥き出しの細い手足にしっとりと濡れた髪、風呂上がりの火照った顔で無頓着にも見上げられ意識して焦る俺の方がバカみたいだ。

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