キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「これでほんとに引いてくれればいいけどな。茉緒にそんな顔させて、俺はこれでも怒ってるんだが?」
咎められたお兄ちゃんが逆に智成を咎め智成は言葉が詰まったように顔を顰めた。
「どうする茉緒? 智成はこの通り父親に抗えないやつで見合いの件も自分の出生も隠してたような意気地なしだ。今日は頑張った方だが結局父親に茉緒と別れて見合い相手と結婚しろと強く出られたら言う通りにしてしまうかもしれない。そんなやつ信用なんかできないだろ? これで俺には茉緒だけだなんてぬかしてるんだから笑えるよな」
「お兄ちゃん」
智成を嘲笑するお兄ちゃんに驚いて凝視してしまう。
親友のはずの智成をこんなに悪く言うお兄ちゃんを始めて見た。
「陸翔、俺はそこまで意気地なしじゃないぞ。茉緒のことは絶対両親に認めさせる。お前の心配はいらない」
不貞腐れたように言い返す智成はまたウイスキーを煽る。
図星だからかお兄ちゃんに辛辣なことを言われてもそんなに怒ることはしなかった。
「心配してくれてるからそんなこと言うの? お兄ちゃん」
「当たり前だろう? 大事な妹をこんな情けない親友に託さなきゃならないなんて心配しかない。捨てられて泣く茉緒の顔なんて見たくないぞ俺は」
顰め面のお兄ちゃんもビールを煽り頬杖を着く。
浮気を心配して私たちの付き合いを反対してただけじゃないんだとやっと気づいた。
お見合い相手である有川さんは生粋のお嬢様ですでに智成の部下として傍で働いているし、結婚したら公私ともに智成を支えられる。お父さんがお見合いを勧めるのも頷ける。
それに引き換え、庶民の私は支えるどころかなにもできなくて足手まといにしかならないと思う。
そんな私より公私ともに支えてもらえる有川さんの方が数倍いいだろう。
いずれ智成は釣り合いの取れる有川さんと結婚するなら、今私と付き合っている意味ある?
自分に自信が持てなくて黙ったままの智成の方を見た。

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