キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
『陸翔、このプロジェクトにはお前の力が必要だ。手伝ってくれないか?』
『やなこった。俺はお前が失敗すればいいと思ってる。茉緒をほったらかしにしてるやつに手を貸すものか』
『陸翔』
短い時間を縫って陸翔に頭を下げたというのにこの態度。
『だったら門限撤廃しろよ。なんなら茉緒と同棲させてくれたらこんなことにはならないってのに』
『それは駄目だ。絶対許さない』
陸翔のせいで茉緒と会えないってのに、ほとんど意地で言っているようにしか見えない陸翔にため息しか出ない。
海外企業を口説き落とすより厄介だなと肩を竦めた。
ただ、なんだかんだ文句を言いつつ、エカトルでプロジェクトに携わっているのは陸翔なので必然的に俺の力になってくれている。
『お前に協力してるわけじゃない』と言いつつ、俺の欲しい資料やアドバイスをくれるのだから、悪態つかれても交際を反対されても憎めないんだから困ったものだ。
味方なんだか敵なんだか、あんまり突っ込むと協力してくれなくなりそうだからそれは聞かないでおいておこう。
仕事の忙しさは徐々に苛烈を極め茉緒に逢いたさゆえに無理して時間を作ろうとしたら茉緒に止められずっと茉緒不足でイラついていた。
たった一カ月でこれだ、先が思いやられると思ったときに茉緒が逢いに来てくれて、ただ寝ている茉緒を抱き締めているだけで癒され力が湧いてくるようだ。
「ありがとう、茉緒」
わずかに頬笑んだように見えたその唇にそっとキスをして俺は目を閉じた。
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