キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
六畳の部屋の中はベッドと小さな机とチェストに取り付けのクローゼット。
ナチュラルテイストと自分好みに統一された私の部屋。
気づけばここを出たのは半年近く前で、あんなに辛くてずっと引き籠っていた暗い日々を過ごした部屋だった。
でも、お母さんが掃除と換気をしていてくれたおかげでずっと私の育ってきた居心地のいい部屋に戻っていた。
どちらかというと私の心が前向きになったからかもしれないけど。
ぐるりと私の部屋を見回した智成が私に向き直る。
「あ、狭いでしょ。と、とりあえず座って」
ひとつしかない椅子を勧めようとしたけどそれは阻止され、なぜかその場でふたり一緒にしゃがみ込みこむことに。私を囲うように座った智成が顔を覗き込んでくる。
「茉緒」
「ぅん……」
返事をしようとすればまた唇を塞がれた。
話したいんじゃなかったんですか、キスしたいだけですか?
抵抗しようとも思ったけど、優しくて温かくてふわふわするようなキスに上げた手を下ろして背中に回した。
漸くゆっくりと離れると夢心地のまま智成を見上げた。
いつものように優しい眼差しを返してくれると思っていたら……。
智成の目は吊り上がっていてギョッとした。
「茉緒、なんで連絡してこなかったんだ? 音信不通になりやがって、どれだけ心配したと思ってる。それに、なんで妊娠してたこと黙ってた? お前の母さんにいきなり父親なのかと聞かれた俺の衝撃わかるか? しかも浩紀と会ってるし。あいつが俺の子だと言いやがって虫酸が走ったわっ!」
「ええっ!? あのっ! そのっ! ご、ごめん!」
いきなり矢継ぎ早に言われてあわあわと慌てるばかりで謝る言葉しか出なかった。
ぴくっと眉を動かし固まった智成ははあっと盛大にため息をつき、不機嫌そうに髪をかき上げた状態で手を止めた。

 
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