キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
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「あれ? 智成目覚ましたんだ。珍しい」
「陸翔、お前女と逢ってただろ」
「えっ!?」
図星を突かれた陸翔は驚いた顔で固まっている。
リビングのソファーで項垂れていた俺ははあっと深いため息をついた。
今日の会食は男ばかりで女なんていないのに、陸翔に抱えられたときに残り香が移ったんだろう。
「いや、まあいいじゃん。たまには」
へらっと言い訳する陸翔をじろりと睨む。
別に悪いとは言っていない。
陸翔も今は彼女はいないがモテる奴だし誰と逢おうがなにをしようが陸翔の自由だ。
今日、妹がひとり寂しく留守番してるのにも関わらず遊んでいるのを咎める気はない。フン。
だが、こいつのせいで茉緒に変な誤解された。
実はずっと眠くて目を開けてなかったが、意識はあった。
茉緒が自分の上に跨ったときには飛び起きようとも思ったが、なにをするのか興味があって寝たふりをしていた。
ネクタイを取るのに手こずっているのも、ぎこちなくボタンを外しているのも、腹に伸し掛かる重さも少し熱い体温も目を瞑っていても伝わってきて、体が疼くのを感じた。
胸に手を当て顔が近づき吐息と共に少し冷たい髪の毛が顔に掛かる。
おいおいと内心焦りさすがになにをするんだと思ったときに『女の匂いがする』と言って体を起こし部屋を出て行った茉緒に俺は呆然とした。
ガシガシと頭をかき乱し、さて、どう誤解を解こうかと思案する。
茉緒が俺の上に乗ったことは俺は知らないことになっているから下手に言い訳すると話がややこしくなりそうだ。
ここはさり気なく話題に出して女などいなかったと気づかせるのが得策だろう。
「なに? なんかあったの? 俺が女と逢ってたのが気に喰わないわけ?」
不機嫌な顔で黙り込んだ俺に陸翔は開き直ったように言って隣に座ってきた。
「別に、そういうわけじゃない。女の匂いがしただけだ」
陸翔に文句を言っても仕方がない。
俺はさらりとかわして風呂に入って寝ると言ってリビングを出た。
「え? 匂い?」
風呂上がりで匂いなんて消えてるのに陸翔は腕を上げ自分の匂いを嗅いで首を傾げていた。
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