キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
なにが? というのは訊かずに吞み込んだ。
お兄ちゃんが出張多いのもわかってるし、いずれ智成とふたりきりになることもわかってたけど、だからってなにかがあるとは思えない。
相手は智成だ。
私のことはお兄ちゃんと同じように妹と認識してるに違いない、ひとりの女性としては見てないだろう。
どのみち私と智成じゃ釣り合わないし、相手にされるわけない。
そんな心配してるって知られたら智成に笑い飛ばされるに決まってる。
わかってるよそんなこと。
自分で考えを巡らせて勝手に落ち込んだ。
「ま、智成だからな、大丈夫か」
お兄ちゃんも同じように思ってるんだろう。肩を竦めて軽く受け流した。
だよね、心配するだけ無駄なんだよ。
「それより、ごめんな茉緒。急に出張になって」
「え? 仕事なんだからしょうがないじゃない」
「明後日誕生日だろ。久しぶりに直接祝えると思ったんだけどな。お前の話も聞いてやりたかったたんだが」
「あ、そうか。私誕生日だ」
そういえばそうだった。
お兄ちゃんはいつも私の誕生日にはメッセージとプレゼントを送ってくれていた。
そういうとこはマメで妹に優しいお兄ちゃん。
私の話しを聞くっていうのは久しぶりにふたりでゆっくり話したかったってことかな?
お兄ちゃんはすまなそうにしてるけど、こればっかりはしょうがない。
「大丈夫、帰ってきたらいっぱい話ししよ。代わりにお土産期待してるよ」
ニッと笑ってちゃかりおねだりするとお兄ちゃんもホッとした顔をする。
「おう! 期待しとけ。智成に茉緒の誕生日祝ってやってくれって言っとくからな」
「え? いいよいいよ言わなくて。気遣わせちゃうから」
「気にすんな。じゃ、行ってくる」
「あ! お兄ちゃん!?」
気にするってば!
お兄ちゃんは言い逃げしてさっさと行ってしまった。
もう、余計なことを。
「気を付けて行ってきてよね」
不満は飲み込んでもういないお兄ちゃんに行ってらっしゃいと呟いた。
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