キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
その日の夕方、急にお兄ちゃんが帰ってきた。
「あれ、お兄ちゃん仕事は?」
「急に出張になった」
「え?」
お兄ちゃんは急いでいるのか自分の部屋に入るとキャリーケースを引っ張り出し、手慣れたように次々と荷物を詰める。
「急にってどういうこと? ニューヨークは?」
確か来週ニューヨークに一週間ほど出張に行くと言っていたのに。
「そのニューヨーク。現地でちょっとトラブっててさ、電話じゃ話し合いも応じてくれなくて急遽今日行くことになったんだ。あ、茉緒その棚の上のバッグ取って」
忙しなく動きながらもお兄ちゃんが大変そうなことをさらっと言う。
え? 大丈夫? と思いながらも私もちょっと手伝ってものの十分ほどで荷物を用意してしまった。
「支度するの早っ」
「間に合えば今日の夜便で立ちたいんだ。出張馴れしてるから支度時間なんてこんなもんだ」
よいしょっとキャリーケースを起こし玄関に向かうお兄ちゃんに付いて声を掛けた。
「大丈夫? 忘れ物ない? パスポート持った? 酔い薬は?」
「ふはっ、母さんみたいだな」
吹き出したお兄ちゃんは靴を履くと振り向き笑う。
「だって心配なんだもん」
「大丈夫だよ慣れてるから。それよか茉緒の方が心配だ」
「私?」
「今の状況じゃいつ帰れるかわからないからな。その間、茉緒は智成と二人暮らしだぞ? 大丈夫か?」
「あ、ああ~大丈夫なんじゃない?」

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