キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です

 
電話をしていた茉緒が取り乱した瞬間、浩紀のことだと勘づいた。
逃げようとする茉緒を捕まえ白状させると、案の定、浩紀のことで曇った顔をする茉緒に胸が痛む。
しかし、最初はあの映画と酷似している内容を淡々と話す茉緒に嘘をついているのかと憤った。ところがそれは事実で映画と似ていたのは偶然だという。
そんな映画みたいなこと、本当に起きるのか?
半信半疑だったが、最後には目尻に涙を溜め辛そうな茉緒にそれは事実なんだと理解した。
そういえばあの日茉緒が寄りかかってきたとき、映画はラブシーンだったが、主人公ふたりではなく恋敵が相手だった。ヒロインに自分を重ねていた茉緒には見たくない光景だったろう。寝てしまって正解だったと思う。
俺もあの映画の最後は見ていないが、ヒーローとヒロインが最後には結ばれるのは定番の話。
でも茉緒は違う。
茉緒が実家を離れこっちにきたのは正解だった。柄にもなく茉緒と出逢えたことを運命に感じた。
茉緒はもう十分苦しんだ。もう解放されていいはずだ。
奇しくも今日は茉緒の誕生日。
今日から茉緒は生まれ変わる。
辛さも悲しみも忘れて幸せに満たされた人生を送るんだ。
俺が、茉緒を幸せにしてやる。
時計を見ると、あと十分で誕生日が終わる。
茉緒が、俺のことをどう思っているのかわからない。
でも俺は今日だけ茉緒の恋人だ。
恋人の辛い顔は見たくない。

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