鬼麟
 制服を脱ぎ捨て、買ったばかりの服に袖を通し、ウィッグとカラーコンタクトをとる。鏡に映るのは金色の髪と赤い瞳で、やっと元の姿になれたことで一息つく。
 服と一緒に買ってあったキャップに髪をまとめていれ、伊達メガネを掛ければあまり目立たなくなる。
 全身黒づくめにはなったが、これならばあまり目立たないだろうとホテルを出る。
 外はすっかり日も暮れており、夜の街は昼間とは違った顔を見せる。通りに出ているのは化粧を施し素肌を惜しげなく見せる女や、小綺麗に見せて金ヅルを狙う男ばかりだ。
 酒気を帯びた男どもが化粧で飾る女に釣られるのも、ルックスに騙される女たちがハイエナのような男に釣られるのも、見ているだけで嫌悪感を催す。たとえ彼らがそれで生計を立てていようと、その元締めを思い出せば拒否反応が出てしまうのは仕方ないだろう。
 足早に通り過ぎようとするものの、信号には逆らえずに立ち止まれば男が寄ってくる。あまり目立たないようにしている上に性別も分かりづらいだろうに、街灯はシルエットを浮かび上がらせて車のライトは顔を照らす。

「お姉さん綺麗ですね! 今おひとりですか? あ、お時間あります?」

 無視しているというのに、男はペラペラと先程まで煙草を咥えていたであろう口で喋るものだから、あまりにも臭くてかなわない。
 青になった信号を見て、眉をしかめたまま歩き出す。男は存外にも諦めが早く、相手にされないと早々に悟って別の女のところへと行った。
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