鬼麟
 もう何度目の“嫌い”、だろうか。
 吐き出してもすっきりしないのは、何も罪悪感があるわけではないというのに、蒼と玲苑、倖の表情が曇る。
 そんな中、修人の無表情が低い声で問うた。

「逃げるのか」

 なんでそんなことを言われなくちゃいけない。何も知らないくせに、何も解っていないくせに。昨日初めて会ったばかりの奴なんかに。
 自身にしか聞こえない程度の溜息を吐き、キッと睨みつける。

「あなた達は暴走族、不良でしょう? 私は一般人なの」

 はっきりとした境界線を示すように言えば、彼等はそれがどうしたと言わんばかりの顔をするので頭が痛い。
 どうやら彼等に嘘はバレていないようで、そこは安心する。それさえバレなければどうやら言い包めることが出来そうだ。

「ましてやあなた達はそれなりに名が通ってるんでしょ」

 それに気取ることもなく、事実だと頷く修人。そこには慢心すらない。

「なら私みたいなのが近付けば、どうなるか想像できるでしょ」

 今朝のように厄介事を持ち込まれても困るのだ。逆恨みなんてとんでもない。私は無関係なんだ、彼等との繋がりは一切ない。
 繋がりなんて、あいつらだけでいい。そこには何人も入れる気はないのだから。
 蒼と玲苑はとくにそれを目撃したのだ。気まずそうに目を逸らしている。

「俺が気に入ったんだ、手出しはさせない」

 自身の耳を疑ってしまう。
 ああ、なんてことだ。私はどこで選択肢を誤ったのか、一番避けるべきものの対象となってしまった。

「修人、凄い引いてますけど」
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