ハニー、俺の隣に戻っておいで
「ジョンおじさん、誤解しないでください。 イザベラに気があるわけないじゃないですか。あんな小賢しくて、あまつさえ俺をダシにしようとする奴なんか反吐が出そうだ。おじさん、あいつ、この俺を利用しようとしたんですよ。あんなしょうもない奴のくせして!」

イザベラの罠にほとんど落ちかけていたことを考えれば考えるほど、ますます怒りがこみ上げる。ジェームズはすっくと立ち上がり、怒りの身振りをして見せた。

けれども、ジョンは「負け犬め」と言ってジェームズを挑発する。 そんな女に利用されかけるとは、この男はどこまで馬鹿なのか?

ジョンが発したのはその一言だけだったが、その冷たい声でジェームズは気まずくなって黙ってしまった。

ジョンに叱られることにはとっくに慣れっこになっていたが、彼の批判を甘んじて受け入れるのは気が進まないのだ。とは言え、今回ばかりはジョンに理があるので叱られても仕方がない。ジェームズは敗けを認めてソファに崩れ落ちた。

女性に簡単に利用される負け犬のレッテルを貼られてしまったというわけか? しかも愚鈍な女性に。つまり、彼は輪をかけて愚鈍だということではないか!

ジェームズはなんとか怒りを抑え込んで落ち着こうとした。 そして、お昼の出来事についてジョンに詳しく話し出した。

「今日、イザベラとクラスメイトがいがみ合っているところに出くわしたんですよ。イザベラは自分をひっぱたいてクラスメイトに罪を着せようとしていたんです。俺が見たときあいつはパニックで、殴られたとかほざいていました。知っての通り弱いものを守るのが俺の主義だから、堂々と間に入って話も聞かずにクラスメイトに詰め寄ったら、そいつ、イザベラをひっぱたいたんです。そうしたら、明らかに手形が違ったんですよ。悔しいことに、そのときやっと本当は何があったのかわかったというわけです」
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