ハニー、俺の隣に戻っておいで
するとイザベラは憤慨し、「お父さん、私は何も悪いことなんかしていないわ」と無邪気に口答えする。

「とにかく、何か言いたいことがあるなら何でまず話し合いに来ないのよ? 何でわけもなくいきなり娘をひっぱたいたりするわけ?あなたの娘は今日ひどく殴られたばかりなのを知らないの?そんなに怒ることないじゃない?」

アメリアは、哀れにもワナワナ震えている娘を腕に抱きかかえ、憤慨して反論した。

「怒ることないだと?」
グレンは嫌悪感を言葉では表しきれず、代わりに毒のある冷笑を漂わせた。そして、イザベラの鼻先をビシッと指差して詰問し始めた。

「別に喧嘩を売るのは構わない。でも、何でよりによってジェームズ・シーを怒らせるんだ。馬鹿なのか?お前のせいで、シー家は私が一生懸命取り組んできた提携をキャンセルしやがった。一瞬で三億の損失だ。しかもだ、ジョン・シー氏は、もう私たちと提携することは金輪際ないとビジネス界中に触れ回っている。で、もう一度聞くが、それでもおまえをひっぱたくべきじゃなかったと言うのか?」

イザベラは泣き止むこともできず、肩はどうしようもなく震えていた。 そして、パニックと怯えを湛えた目で父親を見つめた。

まさか、お昼のあんなちょっとしたペテンが、ジェームズをそれほどまでに激怒させたとは思っても見なかったのだ。 これは疑いようもなく重大な失敗だ。
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