ハニー、俺の隣に戻っておいで
これまでニーナは少なくとも立ち向かってきていたのだが、無視されるというのは初めてだったのだ。 ジョンは彼女が何を考えているのかわからないのが嫌だった。

そして、思った以上にパニックに陥ってしまったのだろう。

タバコを一口吸うたびに、どうやってニーナの口を開かせるか考えていた。

そして、ようやく計略を思いつく。

一方、ニーナは煙の雲の中で息を詰まらせており、 心の中で何度も何度もジョンに悪態をついていた。

ニーナが息を詰まらせているのに気がつくと、ジョンはそっと窓の外にタバコを弾く。

そして冷たい調子で「ビデオは削除したぞ」と言った。

ニーナはしばらく考えていた。

一体この男は何が言いたいのだろう?

彼女は手を上げて額にかかっている前髪をどかし、唇に尖らせて髪を吹き飛ばした。 そして、彼女の明るい瞳はじっと前を見つめていた。

「で、おあいこってこと?」

「そうだろ」 ジョンの口には苦味が残っていた。

彼はかつて人生に退屈していたが、 ニーナのおかげで、少しは面白くなってきたところだった。けれども、彼女は今また距離を取ろうとしているのだ。

どうにかしなくては。

ジョンは「おい、おまえにはまずやらなくちゃいけない事があるだろう」と言った。
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