ハニー、俺の隣に戻っておいで
右手はニーナの腕を掴み左手はジェームズの服の裾を握って、ミシェルはもう出かける気満々だった。 「ほら、シーフード食べに行きましょう。 シーフード・ビュッフェがいいわね」

ミシェルの表情を見ると、ニーナは彼女が何を考えているのか分かってしまった。 ニーナも、ミシェルが彼女のことを貧しいと思い込んでいるのを知っているのだ。 あんな同情的な顔を何度もするのだから気づかないはずがない。

ニーナは一瞬何を言うべきかわからず、 戸惑ってしまった。

「わかったわ、行きましょう」 ニーナは嬉々としてミシェルと腕を組んで歩いた。 本当はミシェルこそシーフードを食べたかったに違いないのと分かっているのだ。

一方、ジェームズは大喜びだった。 そして携帯電話を取り出すと誰かに電話をかけ始める。

「俺がシーフードレストランに電話してテーブルを予約するよ」

「あのレストランすごいのよ! 食材は全部C島から輸入されているんだって。 多分この街で一番新鮮だし、シェフも文句なしだわ。 あそこで決まりね。 そうそう、そのレストラン、シー家が経営しているんだって。 急いで電話してよ!」

C島について話しているのを聞くだけでニーナは唖然として、 しばらくの間、我を忘れていた。

ジェームズが電話を掛けると、ジョンの低い嗄れ声が電話の向こうから聞こえる。 「どうした? 用がないなら切るぞ」
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