ハニー、俺の隣に戻っておいで
ジョンは全く予測不能な男だ。

ミシェルはジョンの言ったことを聞くと頭に来たようで、 口を尖らせて顔を上げ「ニニ、 離婚すべきよ。 そんな障害者と一緒に暮らすなんてありえない。 人生棒に振っちゃうわよ。 ニニ、離婚よ、私も手伝ってあげるから」

ミシェルは本気でそう思っており、目には涙が溢れていた。 ニーナはなんて気の毒なのだろう、 辛い人生を送って、あまつさえ障害者と結婚なんて。

「うーん……」 ニーナは口ごもったが、 ミシェルに影響されて本当に自分は気の毒な気がしてきていた。

「なんだって? ジョンおじさん、本当ですか?」 ジェームズはますます驚いて、 道端の野良犬を見るような目で同情的にニーナを見つめた。 「ニーナ、ミミの言う通りだよ。 そんな男と一緒に居てはだめだ。 離婚しなきゃ」

(離婚して叔父さんと結婚するんだ。

ジョン叔父さんはお金持ちだしかっこいいし才能もある。 ぴったりじゃないか)

「私……」 ニーナは何か言いかけたが、考え直して口を閉じる。 離婚なんかしないと言いかけたのだが、実はその結婚から逃がれるためにあらゆる手を尽くしているではないか。

彼女はほぼ毎日、離婚を懇願するメッセージを夫に送り続けていたが なしの礫で、 一度も返事は来なかった。

奇妙なことに電話番号の主が誰か突き止めることができなかったので、面と向かって交渉するわけにもいかない。

それにサムにまた迷惑を掛けるのも気が引けた。 誰かがサムを訪ねてやってくるのを突き止めようと、ストーンロードで何度か待ち伏せしてみたものの、結局誰もやってこなかった。

ハッカーとして、他人の情報をチェックするのはニーナにとって簡単なことだったが、それにも関わらず、サムと家族に関する情報は見つからず仕舞いだったのだ。
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