ハニー、俺の隣に戻っておいで
「ニーナさん、ミシェルに会いにきたのよ。 どうかしたの?」 エレインは夫の不安そうな表情を見ると疑り深げに眉をひそめた。

アダムズは深くため息を吐くと正直に話し出した。 「その投資家っていうのが条件を出しているんだ。 ミシェルの親友のニーナさんが彼のワインパーティーに参加するなら、投資すると言っていてね」

「でも、どうして? 投資の話とニーナさんにどんな関係があるの?」

「ほら見ろよ。 ニーナさんとても美人じゃないか。 きっとその投資家は彼女に夢中なんだ。 でも、俺たちはそんな品のない真似をすべきじゃない。 忘れよう」

「そうね。 ミシェルはニーナなんていう友人はいないと伝えましょう。 とにかく、あの無垢な少女を酷い目に遭わせるわけにはいかないわ」

二人の意見は一致し、何も知らない振りをする事になった。 しかし、なんとなくがっかりしたのも事実だった。 プロジェクトが進み、いつか実を結ぶことが二人の長年の願いだったからだ。

しかし、希望の光が見えたと思った途端、すぐさま潰えてしまったのだ。

「心配しないでください。私、行きます」ニーナが志願する。 彼女はしばらく前から台所のドアの側にいて、二人の会話を聞いていたのだ。

そして、二人が興奮、期待、失望、優しさと言っためくるめく感情の綯交ぜに晒されているのを目の当たりにしていた。

ジョンがニーナに仕返しするために仕掛けてきたに違いない。

彼女にワインパーティーに来る、と。
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