ハニー、俺の隣に戻っておいで
第37章 彼女のサービス
ジョンはすでに席に着いており、他の人たちもそれに続いた。

アダムズは背後にニーナを隠したまましばらく座ろうとしなかったが、 ウィルソンは彼に目配せを続け、意地を張らないように仄めかした。

「シーさん、 ジュさん、 本当に申し訳ないんですが、 急ぎの用事があるので今すぐ帰らなくてはいけないんです。 深くお詫び申し上げます」 アダムズはそう言うと、ニーナと一緒に立ち去ろうとした。

この行動にニーナはいたく感動した。

ニーナは社交場に出たことが何度もあったが、両親は彼女が途中で退席するのを良しとせず、 出席者を楽しませるのが義務だといって無理強いしたものだった。

「あなたがへーさんで、 それから、 お隣にいらっしゃるのはルーさんですよね? まだ始まったばかりじゃないですか。 こんなにすぐに帰ってしまうなんてありえませんよ」 ジュ氏は 邪な笑顔でそう言ったが、 こんなに不吉なホクホク顔は見ているだけで反吐が出るというものだ。

ついにウィルソンも耐えられなくなり、 「アダムズ、座れよ! いざこざを起こすのはやめるんだ」と叫んだ。

百億円あれば少なくとも二年間はプロジェクトが続けられるはずであり、 懸命に研究を行いさえすれば間違いなく研究成果を発表できるだろう。 こんな名誉は他にないではないか。

アダムズの馬鹿め。

ウィルソンはイライラと立ち上がってアダムズを席に連れ戻す。 しかし、アダムズはウィルソンを全く恐れていないらしく、 しかめっ面で睨み返した。

アダムズの気が変わらないと見るや、ウィルソンはニーナの方を説得しようと試み始めた。 「ルーさん、アダムズ一家にとって科学研究プロジェクトよりも重要なことなんてあるでしょうか? 彼も奥さんも人生をほとんど研究に捧げているんですよ。 それで今、ジュさんが 援助してくださると言うのだから、私たちはとても感謝しているんです」

ウィルソンは恭しく頭を下げてお辞儀し、 ジュ氏を喜ばせようとする。
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