ハニー、俺の隣に戻っておいで
しかし、ニーナはウィルソンのやたら熱心な笑顔を見ただけでイライラした。 その上、ジュ氏が今しがた言ったことは 輪をかけて不愉快で、 本気でこの男の人生を駄目にしてやりたいくらいだった。

彼女がジョンの方に目をやると彼がこちらをじっくり観察しているのが目に入る。 おそらく、ジョンはこの間の仕返しのためだけに私がひれ伏すのを眺めたいんだわ、とニーナは推測した。

しかし、ジェームズによれば彼女は素直にジョンの言うことを聞いておくべきで、然もないとジョンは彼女の友人たちを標的にしかねない。 そんなわけでニーナも今回は諦めることにした。

「飲みましょう、ジュさん 」微笑みながらそう言うと、 ニーナは上を向いて一気に飲み干す。

「おやおや、素晴らしい飲みっぷりですね、ルーさん」 彼女にできないことなどあるだろうか? ジュ氏は 恋に落ちそうだった。

ニーナはワイングラスを置くと申し訳なさそうな笑顔を浮かべ、 「ジュさん、 私に何をして欲しんですか?」

ジュ氏は 有頂天だった。 ニーナは難しい女だと思っていたのだがそれは間違いだったようだ。

「こっちに来て、お座りなさい」 ジュ氏は ニーナに手で合図し、 熱烈に彼女を見つめる。

ニーナがジョンを一瞥すると、彼の顔から嫌悪感そのものが溢れ出すのが見て取れた。

彼女は得意満面だった。 彼女の計略が上手くいき、ジョンがイライラしているからだ。
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