ハニー、俺の隣に戻っておいで
ジョンは片足を車内に入れた時、ニーナの小ぶりだが力強い拳が激しく空を切っているのを目にして 思わず身動きを止め、しばし彼女を見つめてから車に乗り込んだ。

どうやら、ニーナは泥酔していても人を殴り倒すことができるらしい。

レストランでお見舞いした蹴りだけでは満足できないのだろうか?

「おい、座れって!」 ジョンが命令する。 酔って前後不覚の女性なら怖くないというわけだ。

そして彼女の隣に腰を下ろす。

ニーナはジョンに叱られるのを聞きながら、まるで時間が遡ってしまったかのように、むかし家族から酷い扱いを受けていたのを思い出した。 彼女はいつも両親に叱り飛ばされていたのだ。 そして、まだ狼狽えてはいたが素直に席について縮こまり、哀れぽく「分かったわよ」と声を荒げた。

まるで素直な子供のようにうなだれて何も言わない。

ニーナが素直に言う事を聞いたので、ジョンは驚いた。 酔っ払った彼女がそんなに大人しく言う事を聞くとは予想外だったのだ。

彼の思いのまま、何でも言う通りにするのだろうか?

だとしたら、これは最高に面白そうだぞ!
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