ハニー、俺の隣に戻っておいで
ヘレンは時計を見たが、 まだ五時半だ。 どうしてジョンはそんなに早起きしたのだろう?

「うーん」とジョンは答え、痛むこめかみをさすろうと手を伸ばす。 以前は毎日よく眠ることを習慣づけていたので、 昨晩眠れなかったことは彼を少しばかり苛立たせたのだ。

しかも、一晩中まったく眠れなかったのは今月二回目で、どちらもニーナのせいだった。 しかし、その張本人ニーナはまだベッドでぐっすり眠ったままで、ジョンに大いに迷惑をかけたとは全く気づいてもいないようだ。

「ヘレン、今朝はもう一人分朝食を作ってくれ」

「かしこまりました」 ヘレンはさらに混乱したものの、深入りする勇気はなかった。

ヘレンがちょうど出かけようとしたところで、ジョンは再び彼女を呼びつけ「シーフードのお粥を一杯作ってくれ」と言う。

ニーナがシーフード好きなのを知っているからだ。

ジョンは最後にシーフードレストランで食事をしたとき、ニーナがシーフードのお粥を美味しそうに食べていたのを覚えていたのだ。

ジョンはリラックスしてソファに座り、テレビの電源を入れると黙ってニュースを見始め、 台所から漂う朝食の香りを嗅ぐとゆっくりと二階に上がっていった。

ドアを開けるとニーナは繭のようにくるまっており、バラのように輝くピンク色の顔だけが覗いている。

「起きろ、寝坊助。 朝食の準備ができてるぞ」ジョンはそう言いながら手を差し伸べ、ニーナの顔に優しく触れたが、 彼女は不機嫌そうに眉をひそめ、何か訳のわからないことを呟くと寝返りを打ち、またスヤスヤ眠り始めた。

不意に、ジョンの頭にお茶目な考えが浮かんだ。 そして、大声で「火事だ! 家が燃えている!」と言ったのだ。
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