ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナは命の危険を感じながら、そっと様子を伺う。「じゃあ、シーさん の方がいいかしら?」

「シー さんだって? 勘弁してくれ」 ニーナにシーさんなどと呼ばれるのは受け入れがたく、というのも、 そんな呼び方はあまりによそよそし過ぎるからだ。

「じゃあ、なんて呼べばいいの?」 ニーナは心配そうに質問する。 この男は一体何が言いたいのだろう? 他の人たちがいつもそうしているように、シーさん と呼ばせてくれないのは何故なのか?

彼女はジョンの頭蓋骨を持ち上げ脳の中身を見ることで、この男が何を考えているのか理解したいと思った。

ニーナがジョン自身の意見を訪ねるのを聞くと彼の顔の表情はかなり和らぎ、 口角に微かな笑みを浮かべて「その二つ以外には無いのか? おまえの好きにしたらいいじゃないか」

「まあ、私の好きにしたらいいの?」 ジョンが意見を求めてくるとは驚いたことだ。

どうしちゃったのかしら? 昨夜、酔っぱらって強く殴りすぎたせいで、脳に深刻なダメージが残っちゃったの?

そこで、ジョンの外見を慎重に観察したが、 彼の頭は変形しておらず、禿げた跡もなさそうだ。 髪の毛は全く普段通りで、わずかにカールして黒く、所々栗色の差し毛がある。

もちろん、彼の顔は文句の付けようもない程かっこよかった。 ジョンは人を惹きつける断固とした高い眉毛と星空のような瞳を持ち、 尖った唇は実際にはそれほど薄いわけではなく、ピンクがかっている。 そして、よく気づかないうちに唇を舐めたが、それはあまり目立たないとはいえ、彼の行動に忘れがたい誘惑的な印象を与えていた。

そしてちょうど今、いつものように唇を舐めていたが、何と蠱惑的なことか! 彼はどこから見てもとても魅力的だった。

ニーナは、今時の男たちはみんなかっこいいと思っていた。 遺伝的に恵まれた生まれながらの美貌にしろ、パッケージ化された美容整形によるものにしろ、かっこいいものはかっこいいのである。 しかし、ジョンの場合、 魅力的に見せるために素敵な笑顔をしたり愉快なことを言ったりする必要はなく、ありのままで良かった。 そして何よりも、生まれつき並外れた尊厳を持っているのだ。
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