ハニー、俺の隣に戻っておいで

ジェームズによればジョンはニーナのためにそんなことをやらかしたらしいが、それについて彼女はまだ疑っており、自分のためだけにそんな大それたことをしているとは思えずにいた。

このところ彼女はジョンについて多くの否定的な噂を聞いてたが、 それによれば、彼はいつも無情かつ冷酷で、女性にはまったく興味を示さないということだ。 だとすれば、偶然知り合うことになった女性のためだけにそんなことをするはずは無いだろう。

可愛らしい顔がジョンの気を惹いたおかげで少しはましな扱いを受けているとはいえ、彼にとって彼女は一時の遊びに過ぎないかもしれないのだ。

周囲の人々を震え上がらせるほど頑固で我儘な性格からしても、ジョンは女性のためだけにシャン家を打ちのめすほど薄っぺらい人間ではなかろう。

彼らのような社会的地位の高い人々は常にお互い陰謀を企てているため、 何事に取り掛かるにも注意深く利点と欠点を天秤に掛けて行動するのだ。 そこで、一家の尊厳と支配権を維持するためには自分たち怒らせた人々に見せしめの罰を与える必要があるというわけだ。 したがって、人々はシー家と事を構えるべきではなく、 然もなくば、自分が次の標的にされてしまうだろう。

「ジョン・シーさんが やったの？ ！」 イザベラが心に抱いていた幻想と希望は即座に粉砕されてしまった。 ニーナがジェームズに恋をしていると聞いたから、彼女にお願いしに来たのに。

しかし、なんでジェームズではないのか？ どうしてよりによってジョンなのか？