ハニー、俺の隣に戻っておいで
その子がミス・キャンパスと呼びかけてきたのを聞いて、ニーナは、彼女が自分のことを知っているなら都合が良いと思った。 そこで、そっと眉を上げ、優しく親切そうに見せようとした。 そして、ためらいながら焼き芋を指差し「あの、 それ、ちょっともらってもいい?」と尋ねた。

ミシェルは驚いて言葉が出なかった。

目の前にいるのは本当にあのよそよそしいミス・キャンパスなのだろうか?

そしてなぜ、そんなに優しそうに微笑んでいるのか?

彼女は信じられないとでも言いたげに瞬きし、焼き芋を一つ手渡した。 「もちろん、一つあげるわ」

「優しいのね、 本当にありがとう」 ニーナは腹ペコだったので、迷わず手を伸ばして芋を受け取った。 そして、ミシェルが手にしているサツマイモを一瞥すると皮が剥かれていたので、 食べる前に皮を剥かなければいけないのだと察した。

それから、一口かじるとゆっくり甘さを味わった。

「これ何? すごく美味しい」と、満足げに食べながら褒めそやした。

すると、ミシェルは信じられない、という面持ちで唇をなめる。 焼き芋がいつからそんなに素晴らしい味になったのか? そもそも焼き芋、そんなに好きだったかしら?

「焼き芋よ」、不意にミス・キャンパスの質問に答えていない気づくと、彼女はそう言った。

ニーナは口の隅を拭いながら、びっくりして尋ねる。「本当? サツマイモを直火で焼いてもいいの?」

「そりゃそうよ」 ミシェルはそんな質問をされて、妙な気分になった。 ニーナは焼き芋を見たことがないのだろうか?

ニーナは満足げにぱくつきながら、「ええと、本では見たことがあるけど、直火で焼けるのは知らなかったの。 本当に美味しいわ」

なんてこった!

ミス・キャンパスは焼き芋を食べられないほど貧乏で気の毒な生活をしていたのだろうか?
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