ハニー、俺の隣に戻っておいで
第13章 彼は人妻がお好き
そして、ミシェルはどこかから棒を持って来ると、ホテルに忍び込んだ。

一方、ニーナがあることに気づいた。 「あの子の電話番号を聞くの忘れてた……」

そういうわけで、ニーナはミシェルを追いかけるしかなかった。

ニーナが知らなかったのは、彼女がホテルに入るや否やジョンも足を踏み入れていたということだ。

ミシェルは思いのほか走るのが早く、 簡単には見つかりそうもない。

けれども、なんとか見つけて、あとで借りを返せるようにしようと決めていた。 運よく、彼女はミシェルをエレベーターで捕まえることができた。

「ねえ! 名前と電話番号を聞き忘れていたんだけど」

ミシェルは振り返ると、ニーナを見て驚いた。 「えっ? ここで何してるの?」 すっぴんのニーナの顔はミシェルに声にならないため息をつかせる。

「本当に綺麗。 彼女を見ているとドキドキしちゃう」

「なんでいつも私のこと見つめるの?」 ニーナはこんな風に彼女を見つめてくる女の子を見たのは初めてだった。 しかも、彼女の瞳には羨望も嫉妬もないのだ。

ニーナはエレベーターを指差して、「あっ、エレベーター行っちゃった。 次のを待たなくちゃ」と言った。

「えっ?」 ミシェルが我に返ったとき、エレベーターが上がって行ってしまうのが見えた。 ホテルは20階以上あるので、次のエレベーターを待つのは時間がかかるだろう。

ミシェルは首を横に振り、笑顔でニーナを見つめた。 「何て綺麗なの! 私、何しようとしてるのか忘れちゃいそう」

ニーナはこれを聞いて大笑いしそうになったが、 何とか堪えて、ただ小さく微笑み返した。 この子は、昔育てていたウサギみたいに可愛い。

「じゃあ、次のを待ちましょう」 ミシェルは少しがっかりしているようだったが、しばらく待たなければならないことを気にしてるわけではなかった。

「名前を聞きにきたの? ミシェル・ヘ、よ。 情報科学科の学生なの。 でも、たいていみんなミミって呼んでる」 そして、握手しようと手を差し出した。

ミシェルの手を握ったとき、何かが不意にニーナの頭に思い浮かんだ。 「ミミ? ミミミシェル?」

「何で知ってるの?」
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